慢性静脈不全症について

血管の基本構造

全身を流れる血液の管(血管)には、動脈と静脈の2種類あります。心臓から送られた血液を全身すみずみまで運ぶ役割を担うのが動脈、各臓器に運ばれた血液を心臓に戻す役割があるのが静脈です。静脈は、血液と同時に全身の老廃物を回収する働きもあります。足の静脈には、重力とは無関係に下から上に血液を送るという特別な働きがあります。
足の静脈は、表在静脈・深部静脈・交通枝の3種類あります。

表在静脈

皮膚の下を流れる静脈です。足の皮膚表面に近い場所にあり、太腿からふくらはぎ内側にあるのが大伏在静脈、ふくらはぎの後ろ側にあるのが小伏在静脈の2本あります。

深部静脈

足の深い部分の静脈です。筋肉の間や中にあり、表在静脈よりも太くて筋ポンプ作用と深い関わりがあります。

交通枝

表在静脈と深部静脈をつなぐ静脈です。

下肢静脈瘤は、皮膚表面に現れるため、見た目が気になるなどのストレスが伴います。静脈瘤自体は疾患ではなく、その原因である静脈の支障及び逆流している部位を特定して、逆流そのものを止めなければ解消できません。逆流を止められれば、新たに静脈瘤に血液が入ってこないので、表面の静脈瘤は次第に小さくなっていきます。逆流を放置して静脈瘤そのものを切除したり、硬化療法を行っても静脈瘤が再発する可能性があります。硬化療法や血管内焼灼術を行う場合、静脈を閉塞させますが、表在には静脈がいくつもあるため、閉塞されても別の静脈を流れるので問題はありません。下肢静脈瘤は、表在静脈に起こり、深部静脈には起こらないため、治療対象となるのは表在静脈と交通枝の場合がほとんどです。

慢性静脈不全と下肢静脈瘤

足を流れる静脈の血流が滞り、心房に血液が戻りにくくなる状態を慢性静脈不全と言います。血流を阻害する要因として、以下の4つに分類されます。

静脈の閉塞

足を流れる血液のおよそ90%は深部静脈を通ります。残りの血液は、表層静脈を流れます。したがって、深部静脈に血栓が出来ると、静脈の流れが大きく停滞することになります。大量の血液が足に溜まるので、急激に足が腫れてきます。深部静脈を塞いでいる血栓が肺に移動すると、肺閉塞症を起こします。胸痛や呼吸困難・吐血・心肺停止の恐れがあるので予防することが非常に大切です。治療方法は、血液を固まりにくくして血栓の肥大化を防ぐ抗凝固療法と、すでに出来てしまった血栓を溶かす血栓溶解療法を行います。また、足を弾性ストッキングや弾性包帯で圧迫しながら足に滞留している血液を心臓へ押し上げ、血液が滞らないように促します。

静脈の逆流

静脈の逆流で代表的なのが下肢静脈瘤です。静脈を流れる血液には、全身の老廃物を多く含むため、逆流によって足に血流が滞留すると、倦怠感やむくみ、痒み、痛みを伴います。足表面には血管が浮き上がって見えるため、見た目の異常からストレスが伴います。静脈には、本来逆流を防ぐ弁があります。その弁が、なんらかの理由によって機能低下し、心臓よりも下にある足に血液が滞留してしまいます。さらに病状が進行すると、痒みが伴う湿疹・皮膚表面の色素沈着・皮膚表面がえぐられるような潰瘍が生じます。治療方法は、弾性ストッキングや弾性包帯を用いた圧迫療法と、静脈患部にレーザーや高周波カテーテルを挿入し閉塞させて逆流を防ぐ血管内灼熱術を行います。この場合、閉塞された静脈は数カ月で周囲の組織に吸収され消失します。

深部静脈血栓後症候群

深部静脈血栓症の治療後に、血液の逆流が引き起こる場合があります。治療開始して数カ月経つと、本来備わっている固まった血液を溶かす作用に加えて、投薬の影響によって血栓が溶けてきます。それと同時に、静脈壁に張り付いた血栓の影響で弁の機能が低下し逆流が起きます。深部静脈の血流が滞ることは、幹線道路の通行止めと同じように大量の血液の停滞が生じます。慢性的に足がむくみ、ここまで症状が進行すると治療に時間が長くかかります。弾性ストッキングや弾性包帯を長く装着する必要があり、これをせずに放置するとむくみが酷くなり、うっ滞性皮膚炎にかかってしまいます。皮膚表面が色素沈着によって黒ずみ、痒みが現れます。痒みにまかせて掻きむしると潰瘍につながるため注意が必要です。根気よく治療を続けていきます。

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